二人暮らしをはじめる人に、
贈るなら
二人で暮らしはじめる人への贈り物は、どちらか一方のものにならないものがいい。 植物はその点で、めずらしく中立でいてくれる。 置き場所を二人で決められる小ささで、ひと鉢だけ。そう決めてから迷わなくなった。

友人が、来月から二人で住むのだと言った。何か贈ろうと思って、まず浮かんだのは食器だった。 けれど二人分の器を選ぼうとして、手が止まった。好みが割れたとき、どちらかが我慢することになる。 マグカップなら、どちらのものかがはっきり決まってしまう。 贈り物なのに、家の中で持ち主を線引きしてしまうのが、なんとなく気になった。
どちらのものでもない、ということ
そこで植物にした。植物には、持ち主がいないところがいい。 棚に置かれた鉢は、どちらか一方のものにはならない。二人のあいだに、ただ置かれている。 引っ越し祝いに植物を贈るときにも同じことを考えたのだけれど、 二人で暮らす家では、その中立さがもう少しはっきりと効いてくる気がした。 趣味が割れても、どちらの色でもない緑なら、たいてい部屋に馴染む。
置き場所を、二人で決めてもらう
だから大きさは、棚の一段におさまるくらいにした。 床置きの大きな鉢だと、置ける場所が最初から決まってしまう。 小さければ、キッチンの窓辺にするか、テレビの横にするか、二人で言い合う時間が生まれる。 引っ越したばかりの部屋にまず植物を置くのと同じで、 段ボールが積まれたままの部屋でも、ひと鉢なら場所が見つかる。 荷ほどきの合間に、ここでいいんじゃない、と決まっていく。その数分が、贈り物の本体なのだと思う。
世話を、分け合えるかどうか
ふた鉢にして、ひとつずつ渡すことも考えた。でもそれだと、それぞれの鉢になってしまう。 ひと鉢だから、どちらかが水を足す。気づいたほうがやる、という形が残る。 水耕仕立てにしておけば、器の中の水位が外から見えるので、口で伝える必要もない。 夏は数日に一度、冬は一週間から十日に一度。減っていれば足す、それだけの関わりかた。 土を使わないぶん虫の心配も少なくて、引っ越したばかりの部屋に持ち込みやすい。
持ち主のいないものが、家にひとつあるといい。どちらのものでもないから、二人のものになる。
しばらくして写真が送られてきた。冷蔵庫の横の、細い棚の上に置かれていた。 葉が増えたら、株を分けてもうひとつの器に移すこともできる。そのときは、鉢がふたつになる。
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