相手の部屋を知らないまま、
植物を選ぶとき

相手の部屋を知らないなら、部屋に合わせにいかないほうがいい。 どこにでも置ける小ささで選んで、置き場所は相手に委ねる。 そう決めてから、贈るときの迷いがずいぶん軽くなった。

棚の一段に並べて置かれた、水耕仕立ての小さな観葉植物ふたつ

職場の人に贈ることになった。家に行ったことはないし、どんな部屋に住んでいるのかも知らない。 床の色も、窓がどちらを向いているのかも分からないまま、画面の中の写真を眺めていた。 相手の部屋を想像しながら選ぼうとするほど、決められなくなっていった。

想像で合わせにいくと、外れる

白い部屋だろうか、木の家具が多いだろうか。そんなふうに考えて選んだものは、たいてい当たらない。 当たらないだけならいいのだけれど、大きな鉢を選んでしまうと、受け取った人は家具の位置から考えることになる。 贈り物が届いた日に部屋の模様替えを始めさせてしまうのは、少し違う気がした。 引っ越し祝いに植物を贈るときにも同じことを思ったのだけれど、 相手の暮らしに余白を求める贈り方は、どこかこちらの都合が勝っている。

どこにでも置ける、という選びかた

それで、部屋に合わせるのをやめた。かわりに、どんな部屋にも置ける小ささを選ぶことにした。 棚の一段におさまる高さなら、本の隣でも、机の端でも、洗面所の棚でも置き場所が見つかる。 日当たりも同じで、明るい日陰でも育つポトスのようなものを選んでおけば、窓から離れた場所でも困らない。 水耕仕立ての透明な器は、水がどれだけ残っているかが外から見えるから、育てた経験がない人にも様子が分かる。 部屋を知らないぶん、置ける場所の幅を広げておく。そういう選びかたに落ち着いた。

置き場所は、相手が決めればいい

渡すときには、置き場所をひとつだけ提案して、あとは何も言わなかった。 植物に添える言葉も一行だけにした。 後日、写真が送られてきて、私が想像していたのとはまったく違う場所に置かれていた。 キッチンの棚の、電気ケトルの横だった。私には思いつかない場所で、そこがいちばん似合っていた。

部屋を知らないまま贈るというのは、置き場所を決める楽しみを相手に残しておくことでもある。

知らないことを埋めようとしなくてよかったのだと思う。選ぶのはこちらで、置くのは相手。そこで役割が変わる。

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