洗面所の棚に、
緑をひとつ置くという発想

洗面所は、窓がなくても植物を置ける場所です。 耐陰性のある植物を水耕仕立てで選べば土がこぼれず、こもりがちな湿気もむしろ味方になる。 朝いちばんに立つ場所に、緑をひとつ置いてみた話です。

洗面所の棚に置かれた、水耕仕立ての小さな観葉植物

植物を置く場所を考えるとき、洗面所は最後まで候補に上がりませんでした。 窓がない。狭い。水はねがある。 置かない理由なら、いくらでも思いつきます。

それでも試しにひとつ置いてみたのは、 朝いちばんに立つのがこの場所だと気づいたからでした。

一日の最初に、目が合う場所

起きて、寝室を出て、まっすぐ洗面所へ行く。 鏡の前に立って顔を洗い、歯を磨く。 その二、三分は、朝のうちでいちばん決まりきった時間です。

リビングの植物は、忙しい朝にはほとんど見ていません。 キッチンの窓辺に、水耕の鉢がひとつあるときも、 見るのは料理をする夜のほうが多い。 けれど洗面所は違って、必ず立ち止まり、必ず数分そこにいます。 鏡の端にうつる緑に、毎朝いやおうなく目が合う。 置いてみるまで、そんなに確実な場所だとは思っていませんでした。

湿気は、思っていたより味方だった

気がかりだったのは湿気です。 けれど、もともと熱帯の湿った空気の下で育つ植物にとって、 洗面所のこもった空気は悪いものではありませんでした。 冷暖房で乾く部屋に置いていたときより、葉先が茶色くなりにくい。 週末の掃除のついでに、葉を拭くという習慣のなかで、 葉水を吹きかける回数はむしろ減りました。

気をつけているのは、水はねと洗剤のほうです。 洗面ボウルのすぐ横ではなく、少し離れた棚の上に置く。 それだけで、泡や飛沫が葉にかかることはほとんどなくなりました。

光については、正直なところ足りていません。 窓のない洗面所では、成長はゆっくりになります。 それでもポトスのように暗さに耐える植物なら、 照明をつけて手元がはっきり見える程度の明るさで葉を保ちます。 二週間に一度ほど、休みの日に窓辺へ移してしばらく置く。 そのくらいの気まぐれな世話で、いまのところ続いています。

歯を磨きながら、水位を見る

水耕仕立てを選んだのは、この場所の狭さのためでした。 歯ブラシ立てとタオルのあいだに残っているのは、手のひらほどの面積です。 土の鉢だと受け皿がいるし、こぼれれば棚が汚れる。 透明な容器なら、置くのは容器ひとつぶんで済みます。

そして、歯を磨いているあいだに水位が見えます。 減っていたら、口をゆすいだついでに足す。 透明な容器だからこそ気づく、水の減り方を、 わざわざ確かめに行く必要がない場所に置いた、ということかもしれません。

置き場所を決めるのは広さではなく、その前に立つ時間の長さだった。

夜、洗面所の灯りを消す前にもう一度そこを見ます。 一日の最初と最後に、同じ緑を見ている。 置かない理由をいくつも数えていた場所が、いまはいちばん見ている場所になりました。

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